藤井酒造について

天壌無窮

天地(あめつち)と共に永遠に伝わり栄えてきわまりないこと。

我が国最古の歴史書『日本書紀』(AC720)にも登場するこの言葉は、
窮まること、尽きることのないものを受け取り、引き継いでいくことを意味します。
時代が移り、人の肉体は朽ちても、人の精神は脈々と続いていきます。
これは、私たちの家業である酒造りについても言えること。
代々の蔵の当主の思いを乗せて、今日までの酒は進化を続けてきました。
蔵の歴史に敬意を払いつつ、今までで一番良いものを造る。
伝統の酒造りをさらに進化させて次の世代へと手渡していく。
これが私たち藤井酒造の目指す酒造りです。

安芸の小京都、竹原の酒

藤井酒造は、江戸時代末期の文久三年(1863年)に創業されました。

竹原は瀬戸内海に面し、製塩業で栄えた歴史を持つ美しい町で、「安芸の小京都」とも称されます。古い木造建築が並ぶ町並みや歴史的な神社仏閣が今も残り、豊かな食文化も育まれてきました。

150年以上にわたり、竹原の自然の恵みを生かした酒造りを続け、明治40年には全国清酒品評会で日本一に輝きました。

私たちの蔵は大量生産こそしませんが、だからこそ自分たちにしかできない酒造りを追求しています。
小さな蔵でありながら、日本酒文化を支える存在であり続けたいと願い、竹原の風土を生かした酒を醸し続けています。

守り続ける伝統

藤井酒造の酒造りの根幹をなすのは「生酛(きもと)」という伝統製法です。

創業以来80年間、すべての酒を生酛で仕込み、明治40年には全国清酒品評会で日本一を獲得しました。

しかし、時代の変遷の中で一時は途絶えた生酛造り。しかし、2010年に復活させ、2023年にはすべての酒を生酛で醸すようになりました。

生酛は、蔵の環境に生息する微生物と共に行う醸造法であり、まさに自然との対話です。同じ原料を使っても、その年の気候や微生物の働きによって酒の味わいは変化します。

私たちは、この蔵独自の生態系こそが守るべき伝統であると考えています。

これからも、先人が育んできた蔵の環境を大切にし、その特性を活かした酒造りを続けていきます。

世界のNIHONSHUへ

藤井酒造が目指すのは、エレガントで寛容力のある日本酒です。

ただ美味しいだけではなく、その先にある価値を提供することが重要だと考えています。日本酒は、世界でも類を見ないほどの多様な飲み方が可能な醸造酒です。だからこそ、造り手が飲み方を限定するのではなく、飲み手が自由に楽しめる力強くエレガントな酒を目指しています。

私たちは、蔵独自の生態系が生み出す唯一無二の味わいを軸に、近代的な学術や技術を融合させながら、日本酒の可能性を広げていきます。

伝統を守りながらも進化を続け、世界に誇れる「NIHONSHU」を造り続けることが、藤井酒造の使命です。