不易 ✕ 流行

変わらぬ本質と、しなやかな進化

藤井酒造の醸造理念は、
「不易流行」の言葉に集約されます。

不変の価値(不易)を守りながらも、
現代の知見や技術(流行)を取り入れ、
環境や時代に応じて進化し続ける姿勢を大切にしています。

蔵に息づく自然発酵の個性を軸に、
細やかな観察と丁寧な調整を重ね、
揺らぎの中にひとつの輪郭を描く。

それは、自然と技の対話から生まれる、しなやかで確かな酒造りです。

蔵の記憶を、次の世代へ

長年にわたる営みによって育まれた
蔵独自の微生物生態系は、
酒質に個性を与えると同時に、
文化的・環境的な価値も有しています。
この微細な生態系は一度失われれば
再現が困難であるため、
蔵を守ることそのものが持続可能な
ものづくりへの責任と考えています。
酒蔵とは、建物でも技術でもなく、
「自然と人が呼吸を重ねる場所」。
その在り方を守りながら、
未来へとつなげていきます。

あの火が絶えなかったなら

1907年、第一回全国清酒品評会にて
「龍勢」は日本一の評価を得ました。
戦後の混乱と近代的な手法の普及により、
生酛の技術は一時中断。
2008年に復活しました。
そして2023年
全量生酛への完全回帰を果たしました。
──もし、あの時代の技が
絶えず受け継がれていたなら。
今と過去をつなぐ一杯に、
私たちはその思いを込めています。

静けさ、暮らしの中に

記憶が息づく、静けさと深みの一杯を。

竹原の地に根ざし、自然とともに、
そして微生物とともに。
ただ美味しいだけでなく、
誰かの暮らしにそっと寄り添い、
静かな余韻を残すような一杯を、
今日もこの蔵から。
日々の営みの中に、
静かに佇むような一杯を──
それが、藤井酒造のめざす日本酒です。